汽車の嘶きと戦禍を廻り

鋭い音がする。
「なあ、あんた、なんて名前なんだ?」
轟音。轟音。
微かな息の音が聞こえる。
荒い息がーー心臓の音が聞こえる。
「これを、必ずーー」
轟音。轟音。
友の声が。
差し出された手は。
「......生きたい」
轟音。
耳障りな音が走る。
ーーそして、あなたたちは目を覚ます。
「なあ、あんた、なんて名前なんだ?」
轟音。轟音。
微かな息の音が聞こえる。
荒い息がーー心臓の音が聞こえる。
「これを、必ずーー」
轟音。轟音。
友の声が。
差し出された手は。
「......生きたい」
轟音。
耳障りな音が走る。
ーーそして、あなたたちは目を覚ます。
儚い夢はあなたの脳裏にも残らず消えていった。今日も1日は始まる。日常は続いている。
失ったものを数えながら。失った傷を抱えながら。それでもあなたたちは生きている。
いっそ、全て忘れてしまえば幸せだっただろうか。
けれど。
あなた方は、今日も生きていく。
ーーそれが、勝ち取った未来に生き残ったものの定めと信じて。
けれど。
あなた方は、今日も生きていく。
ーーそれが、勝ち取った未来に生き残ったものの定めと信じて。
クトゥルフ神話TRPG 1945年 英国探索者
【汽車の嘶きと戦禍を廻り】
初版 2021年春